寒蝉鳴(ひぐらしなく/かんせんなく)
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地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。
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2020年 08月 12日
8月12日は、七十二候では38候、立秋の次候、『寒蝉鳴(ひぐらしなく/かんせんなく)』の始期です。 あたかも夏の終わりを予感させるがごとく、蜩(ひぐらし)が静かに鳴く頃、または、法師蝉(ほうしぜみ)が盛んに鳴く頃。 立秋に入り、初侯では、真夏の最中、ふとした瞬間に「涼風(すずかぜ)」が吹いて、秋の気配を感じたということでしたが、この次侯では、夏の虫である「蟷螂」「蛍」(芒種の25候・26候)以来、「寒蝉(ひぐらし)」が秋の虫として登場し、「夏闌(なつたけなわ)」「夏深し」の頃合いですが、その鳴き声にて、人々の心に、初めて秋の情感を呼び覚まさせるかのごとくです。 次の末侯では、ひんやりと立ち込める「霧」がテーマとなり、一転して、音のない静寂な世界へと移り、2つの候でコントラストを効かせて、秋の訪れを表しています。 「寒蝉(かんせん)」とは「秋告蝉(秋つげぜみ)」、即ち秋の訪れを告げる蝉ということですが、一般的に蜩とする説に対して、法師蝉=つくつく法師(ツクツクボウシ)とする説もあります。 実際、世の中の辞書には両方が併記されており、蝉は一般的に夏の季語であるのに対して、蜩も、法師蝉・つくつく法師も、共に秋の季語となっております。 蜩は、夕暮れ時に鳴くので「日暮(ひぐらし)」と呼ばれるようになったそうですが、日の出前や日没後の薄暗い時間帯、「カナカナカナ・・」と甲高い鳴き声が辺りに静かに響きます。 蝉の鳴く時間帯は種類によって異なりますが、蜩は特に暑さにあまり強くなく、強い日差しも苦手なので、主に朝晩に鳴くという特色があります。 カナカナ蝉とも呼ばれる蜩の淋しげな声は、夏の終わりを惜しんでいるように聞こえ、また、その懐かしく涼しげな声は、まさに秋の訪れを告げるが如くに心に沁みわたり、情景としてはしっくりときますが、蜩が鳴き始める時期は、実は夏至に入ってからで、遅くとも7月初旬には鳴いてるので、「寒蝉」=蜩ではないという見方も出るわけです。 法師蝉=つくつく法師は、ちょうど8月中旬頃から鳴き始めて9月にかけてピークを迎えますので、時期としてはピッタリです。 その特徴的で変化のある鳴き声で存在感は抜群であり、他の蝉が少なくなる8月下旬には鳴き声がひと際目立つようになることから、「寒蝉」=法師蝉(つくつく法師)とする見解も有力です。 どちらも秋の季語となっているように、夏の終わりの哀愁を感じさせてくれる蝉であるのは確かなことです。 あまりどちらかと決めつけることはせず、両方とも「寒蝉」であると前向きにとらえて、両者の声に出会えた際には、風情や情緒を感じるのが宜しいかと思います。 たくさんの蝉が一斉に鳴き立てる声は「蝉時雨(せみしぐれ)」と呼ばれ、この時期の風物詩の一つですが、実は蜩や法師蝉以外の蝉も、蝉の種類によって鳴く時期は移り変わっていきます。 先ず、ハルゼミは4月下旬から、ニイニイゼミは6月から、鳴き始めます。続いてヒグラシ(蜩)ですが、その後、ミンミンゼミやアブラゼミが7月中旬の盛夏を迎えて登場します。 クマゼミは7月下旬から8月上旬にかけて現われ、そしてツクツクボウシ(つくつく法師)が夏の終わりを締めくくるというわけです。 蝉の鳴き声は、種類に応じて異なりますが、雄の腹腔内には共鳴室が発達しており、羽でお腹を擦って摩擦音を鳴らすと共に、発音膜を発音筋で震わせて出した音を空洞の共鳴室で大きくしています。 腹弁の開閉の調節で鳴き声の強弱や調子を変えていますが、種類によって体型の違いや動きの変化があり、それが各々の鳴き声の音色やリズムを特徴づけているようです。 夏には、蝶や蛾、カブトムシにクワガタ、トンボにカゲロウ、バッタなど、様々な昆虫が盛んに活動しますが、蝉たちは、我々の身近で、他に例を見ない大きな鳴き声で、夏の象徴の一つになっています。 成虫になってからの蝉は、その短い命を燃焼するかの如く、限られた時を惜しんで鳴いているように感じられ、人々の夏の想い出にも深く刻まれてきました。 他方、蝉は身近な存在のようでいて、生態については未だわからないことも多いようです。 昔から蝉の寿命は卵から始まって大体1~7年で、成虫の寿命は1週間とも言われてきましたが、実は比較的長く、実際には1ヶ月前後は生きているらしいことがわかってきてます。 成虫になって直ぐに鳴けるわけではなく、発声器官が機能するには数日間はかかるようで、満を持して命の最高潮の瞬間を迎え、子孫を残すために必死な想いで鳴いているわけです。 北米の蝉の中には、13年周期、17年周期で大発生する「周期ゼミ」「素数ゼミ」と呼ばれる種類があり、日本の生物学者の研究により、氷河期を生き残った進化の結果であることがわかってきました。 いろいろと文献があって興味深いですが、キーワードは最小公倍数で、生物としての蝉が進化の過程で、素数という数学における概念を利用して種を守ってきたという不思議な事実に、静かな感銘を覚えます。 二つの寒蝉、蜩も法師蝉も、人には秋を告げながら、彼ら自身は秋を知ることもなく、夏の終わりに命を完全燃焼します。 夏の照りつける日差しの下、蝉の大音量の鳴き声を聞くと、正直うっとうしい気持ちになりますが、時には蝉たちの懸命な叫びに耳を傾けて、生命の力強さと儚さを感じつつ、静かに瞑想に耽ってみてはいかがでしょう。 特に、蜩については、古来から、万葉集に始まって、現代に至るまで、様々な和歌の中で詠まれてきており、秋の季語として、俳句にも詠われてきました。 古今和歌集には、よみ人しらずで、以下の歌がありますが、1100年以上の時を隔てているにもかかわらず、現代の人々にも直ぐにわかる言葉だけで詠まれており、辺りの景色が浮かぶようです。 「ひぐらしの 鳴く山里の 夕ぐれは 風よりほかに 訪ふ人もなし」 意味はそのまま、「蜩の鳴くこの寂しい山里の夕暮れには、風より他に訪れる人もいない」ということで、人恋しさも募るような物寂しい歌ではありますが、寂寥感の中にも、生きている実感も伝わってくるようで、また、現代の我々からは、日常を離れた情景を想起させてくれますので、心落ち着かせる瞑想のお供に、ご紹介する次第です。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら
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| 2020-08-12 08:01
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