鱖魚群(さけのうお むらがる)
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地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。
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2020年 12月 16日
12月16日は、七十二候は63候、大雪の末候、『鱖魚群(さけのうお むらがる)』の始期です。 鮭が群れをなして、産卵のために川を遡り上っていく頃。 大雪の節気の趣旨は冬本番、初候では「天空」の気が塞がれて真冬の到来を告げて、次候では「熊」の冬ごもりと続き、「開」から「閉」、「動」から「静」への変転が描かれてますが、この末候の「鮭」に関しては、子孫を残すために渾身の力を振り絞って川を遡る「躍動感」、次の世代に繋ぐことを目指した最後の「動」、最終局面での「生の輝き」のようなものを感じます。 一つ前の次候『熊蟄穴(くま あなにこもる)』との関係では、今回の主役として登場する鮭は、熊たちが冬ごもりの前に栄養をつける大切な食物の一つでもあります。 北海道のヒグマが、遡上してくる鮭を捕えて口に咥えている姿は、自然界のドキュメンタリーや木彫りの置物などでお馴染みの構図の風景であり、食物連鎖の一場面と言えます。 ストーリ性を感じる展開ではありますが、鮭の遡上は実際には9月から始まって12月頃まで続くという中で、この時季の七十二候に鮭が取り上げられているのには多少事情があります。 それは、中国で作られた七十二候が、日本の気候風土に合うように改定されて「本朝七十二候」となり、明治時代に「略本暦」として改訂される中での経緯にあります。 本来、「鱖魚(ケツギョ)」とは、中国大陸東部に生息する淡水魚で、「桂魚」とも呼ばれる高級魚であり、鮭と同じように群れて泳ぐ魚だそうですが、中国の暦が日本に入ってきた際に、日本には「鱖魚」がいなかったので、代わりに同様に群れて遡上する生態の「鮭(サケ)」を充てたと考えられています。 「鱖」の音読みは「ケイ」「ケツ」であり、「鮭」の音読みも「ケイ」であったという共通点もありますが、「鱖魚」はスズキ目スズキ科に分類され、「鮭」はサケ目サケ科で別の魚です。 経緯は以上ですが、鮭は、実は、鱖魚よりも断然、広範な活動範囲を誇っており、とてもダイナミックな生き様を私たちに示してくれる魚です。 「白鮭(シロサケ)」の稚魚たちは、日本の川の上流で孵化し、生まれ育った川を下って海へ向かいますが、降海後は、数千キロメートルに亘って大海を回遊し、壮大な旅を続けて、3年〜6年くらいかけて充分に成熟した後、秋から冬にかけて母川に回帰、すなわち、故郷の生まれた川へと戻ってきます。 大海で数年暮らす間の回遊ルートに関しては、謎のベールに包まれた部分が少なくありませんでしたが、近年は大分解明されてきているようです。 まず、春から夏に海に降りた鮭は、遊泳能力や餌を捕る能力を養った上で、初夏までに北のオホーツク海へと回遊して過ごした後、晩秋以降に南東の北太平洋西部へと回遊し、最初の冬を過ごします。 翌年の春になりますと、北東に位置するベーリング海へと回遊し、秋まで過ごして成長し、再び秋には南下してアラスカ湾に入って越冬します。 その後、春にはベーリング海、冬にはアラスカ湾と2つの海を行き来して、平均して4歳くらいで成熟、ベーリング海から千島列島沿いに西方の日本列島へと南下し、各々の母川に回帰していきます。 長く遠い旅路を経て、日本に帰還することができる鮭はとても少なく、5%未満とも2%未満とも言われます。 鮭がどのようにして故郷の川に戻ってこれるのか、母川回帰の仕組みについては、複数の学説が提唱されていますが、母川特有のにおいを記憶していて臭覚で嗅ぎ分けているとする説、すなわち、「臭覚刷り込み説」が有力視されております。 しかし、遠く離れた外洋から日本列島に至るには、臭覚以外にも複数の方法を賢く使い分けている可能性が高く、体内時計と太陽の位置・高度を基準にしているという「太陽コンパス説」、体内にある磁性体と地球の磁気から方位を感じとる「磁気コンパス説」、外洋の海流を利用して回遊方向を決定する「海流説」などが唱えられております。 アイヌの人は、鮭を「神の魚(カムイチェプ)」と称えて大切にしてきました。鮭の里帰りは、古来から神秘的なものとされてきております。 鮭たちは、産卵場所を求めて大群で川を遡上し、まったく食事もとらず、産卵・受精という大きな役目を終えると、力尽きて死んでいきます。 次の命を繋ぐために一心不乱で遡上してくる鮭で、川が真っ黒になる光景は、とても迫力があり、圧巻であり、人々に大きな感銘を与えてくれます。 鮭の一生は、最初に川を降りた後、何年もの間、大海を回遊して幾つもの海域で暮らし、最後に川を遡上して命を全うするまで、他の多くの動植物と食物連鎖の関係で密接に結びついており、生態系の中で重要な役割を担っているようです。 鮭の遡上は、北海道を中心に北国では冬の風物詩とも言われるほど有名な光景の一つですが、実は本州の割と広い地域において遡上する川が分布しています。 鮭の遡上南限は、太平洋側では利根川など群馬県・埼玉県・茨城県・千葉県に跨り、日本海側では島根県とされており、関東地方でも12月の遡上が見られるようです。 鮭は、熊の冬ごもり準備も含めて、地球のエコシステムにおいて貴重な使命を担っており、我々人間の食材としては、豊富な栄養素を含んでおり、かつ捨てるところのない魚とも言われます。 壮大な生涯や自然界での役割にも想いを致して、身近過ぎて忘れがちですが、我々に与えてくれる恩恵に感謝して、自然環境を守って上手に鮭と共存していくことが大切です。 今年は特に、人類全体として自然界との接し方・関わり方を改めて問われる事象に直面しており、サスティナブルで且つ安心できる世界をじっくりと探求していきたいものです。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら
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| 2020-12-16 08:01
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