地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。
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2024年 02月 29日
2月29日は、七十二候では6候、雨水の末候、『草木萌動(そうもく めばえいずる)』の始期です。 潤いが戻り、だんだんと春めいてくる中、足元や庭先にて、草木が芽吹いて萌え出す頃。 「初春」の後半にあたる節気、『雨水』の三候においては、初侯にて大地が早春の雨で潤い、次候にて大気も湿って霞がたなびきましたが、末候では、いよいよ草や木の出番となり、土中と空中の両方から水分を得て、湿潤を感じ取った植物たちが芽吹きの時を迎えます。 この時季に降る雨は、4候でも紹介した通り、花を咲かせるための養分を与えることから「養花雨(ようかう)」と呼ばれて、人々に歓迎されております。 同じような意味で、「甘雨」「慈雨」や「育花雨」と言われたり、3月も中下旬に入ると開花を促す「催花雨(さいかう)」と呼ばれるなど、恵みの雨を表す表現は豊富です。 七十二候には四季折々に応じて数々の植物が登場して季節の移ろいを知らせてくれますが、6候は「草木」という形ながら植物が主役の最初の候ということになります。 これまで、1候の「東風」や2候の「鶯」との関係で「梅の花」には触れましたが、実は「梅の花」自体は七十二候の表題にはなっておりません。 この後の66個の候の中で、実に30個に及ぶ候において、何らかの形で植物がテーマとして取り扱われて、四季の移ろいが表現されていきます。 今回の6候で一般的には芽生えが始まる「草木」ですが、今後は、8候の「桃」をはじめとして、春夏秋冬を彩る象徴として、個別の花や実が登場していいます。 春の柔らかい日差しを浴びて、土の上や木の先には、ほんのりと薄緑に色づいた芽が見られるようになり、冬の間に蓄えていた生命の息吹きが現れてきます。 「芽生え」の季節を迎え、地面からは「草の芽」が一斉に顔を出して、周辺の樹木では「木の芽」がほころんできております。 「草の芽」が一斉に萌え出てくる様子を「草萌え(くさもえ)」と言い、地面から芽生えるので「下萌え」とも言われます。 「萌」には、草木が芽を出すという意味に加えて、物事が起こり始める、きざす・きざしという意味もあります。 「木の芽(このめ)」とは、春になって芽吹く木々の芽のことですが、「木の芽」が出る時季のことを「木の芽時」と言います。 「木の芽時」の頃合いの雨は「木の芽雨」や「木の芽起こし」「木の芽萌やし」と呼ばれ、この頃の晴天のことは「木の芽晴れ」、更に天候の変化に応じて「木の芽風」「木の芽冷え」という言葉もあり、日本人特有の感性に基づく季節感を表現しております。 草木が芽吹く様子については、「萌え立つ」「萌え出づ」「萌え渡る」などという言い方があります。 「萌木(もえぎ)」といえば、若葉の芽吹き始めた木のことです。草木に命の胎動のようなものが甦ってくるのを感じさせる表現です。 伝統色としての「萌葱色(もえぎいろ)」は、萌え出る葱(ねぎ)の芽のような緑色のことで、緑と薄青の中間のような色です。 歌舞伎の舞台に使われる「定式幕(じょうしきまく)」の色は、黒・柿・萌葱色の組合せで出来ております。 「萌葱色」同様、平安時代から使われている伝統色には、「萌黄色(もえぎいろ)」があり、こちらも春先に新緑が萌え出るような緑色という意味ですが、冴えた黄緑色をしております。 『平家物語』巻九の一節には「敦盛の最期」という有名な話があります。人によっては中学校の国語で学んだ記憶があるかもしれません。 一の谷の戦いで源氏が勝利をおさめ、平家が海上へと逃げて行く際、源氏の武将、熊谷次郎直実が、磯の近くで立派な鎧を着た敵将を見つけ、「大将軍」ならば逃げるとは卑怯、引き返せと声をかけ、取り押さえて首を切ろうとしたところ、まだ16~7歳くらいの若武者であることに気づき、何とか助けたいと思いましたが、後ろから味方の軍勢が迫るのを見て、直実は気も動転しながら泣く泣く若武者の首を取ります。 その「大将軍」と呼ばれた若武者こそ、平敦盛であり、平清盛の弟・経盛の末子にして、前夜、敵も味方もその音色に感じ入った笛の名手なわけですが、敦盛の出で立ちは、練貫(ねりぬき)に鶴の刺繍をした直垂(ひたたれ)、鍬形(くわがた)の打った甲(かぶと)、黄金づくりの太刀などと合わせて、鎧本体は「萌黄縅(もえぎおどし)」の立派なものを着用しておりました。 「萌黄色」は、若者向けの色として好まれ、あの弓の名手、那須与一も着用しており、若武者の象徴のように使われていたようです。 また、伝統色では、早春に生えだして間もない若い芽のような淡い黄緑色は「若芽色(わかめいろ)」とも呼ばれます。「若苗色」や「若草色」よりも更に薄く淡く、綺麗な色合いです。 『万葉集』の巻八の冒頭には、天智天皇の第七皇子、志貴皇子(しきのみこ) が春の到来の懽(よろこび)を詠まれた有名な一首があります。 「石走る(いはばしる) 垂水(たるみ)の上の 早蕨(さわらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも」 意味合いとしては、「岩の上を激しくほとばしる滝のほとりで、蕨が芽を出してくる、そんな春になったことだなあ」というところですが、1300年の時を超えて、日本らしい自然の情景が目に浮かぶと共に、春の訪れを歓び祝う心の高まりが伝わってくるようです。 古典俳諧の世界に目を転じると、江戸時代の三大俳人の一人、一茶には、足元や庭先に芽生えてきた草の青みに目を向けた俳句がいくつか見つかります。 「石畳 つぎ目つぎ目や 草青む」 小林一茶 「垣添や 猫の寝る程 草青む」 小林一茶 「まん丸に 草青みけり 堂の前」 小林一茶 また、芭蕉には、畑か庭に蒔いてあったのでしょうか、茄子の種が春雨の水気を浴びて芽生える姿を詠んだ句がありました。 「春雨や 二葉に萌ゆる 茄子種」 松尾芭蕉 俳句では、「草萌え」などのほか、「下萌(したもえ)」も季語になります。「下」は「枯草の下」を意味しており、「早春に、去年の枯草に隠れるように、草の芽が生えて萌え出している様子」を表しており、乾燥と寒さを耐えて漸く芽吹いた姿に、過ぎ行く冬と訪れる春のコントラストを感じます。 いよいよ次の7候は、二十四節気では『啓蟄』。自然界の季節の連鎖は、草木から虫たちへと、目覚めの春の足取りを着実に繋いでいきます。 日々少しずつ長くなる陽の光を浴びて、草木が淡い色で芽吹くこの時季、先ずは周囲の彩りの変化に春の静かな足音を感じ取りながら、気持ちを和らげて暮らしていきたいものです。 本格的に春が到来する中、世の中の方は、国際情勢については、複数の紛争の行方が懸念される状況であり、国内では、日本銀行の金融政策変更も含めてマーケットや経済の動向が気になります。 「初春」から「仲春」へと移ってからの海外・政治・社会・経済の先行きシナリオについて、プロアクティブに想像力を働かせながら、将来に繋がる種蒔き・水撒きを考えて、前向きに取り組んでいきましょう。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2024-02-29 08:01
| 雨水(うすい)
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2024年 02月 24日
2月24日は、七十二候では5候、雨水の次候、『霞始靆(かすみ はじめてたなびく)』の始期です。 時に春霞がたなびき始め、遠くの山や景色がぼやけて見える頃。 『雨水』の節気に入り、初候・4候では大地が潤いましたが、この次候・5候では、春の陽気に乾燥していた冬の空気が後退し、大気も湿り気を帯びていきます。 朝方や昼間、霧や靄(もや)が発生して、遠くの山や景色がほのかに現れては消え、山野の情景に春の趣が加わる時季です。 そして、末候・6候では、大地と大気の湿潤の流れを受けまして、植物の芽生えの時を迎えることになります。 『雨水』は初春の後半にあたり、水気を帯びた気候への移ろいが、生命の息吹きへの環境づくりをしており、春の到来が確かなものになってきます。 「霞」とは、大気中に細かな水滴や湿った微粒子が増えて、遠くがぼんやりとかすんで見える現象で、春に「霧」や「靄」が出て視界が悪くなる状態を表しています。 「靆(たなびく)」とは、霞や雲が薄く長く層をなして、横に引くような形で空に漂う様子を表しており、「棚引く」とも「棚曳く」とも書かれます。 「霞」と「霧」「靄」の関係ですが、一つには、「霞」の方は気象用語としては使われませんが、「霧」や「靄」は気象用語として使われています。 「霧」は「微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態」を指し、「靄」は「微小な浮遊水滴や湿った微粒子により視程が1km以上、10km未満となっている状態」を表すようです。 必ずしも「霞」と「霧」は別物ではないわけですが、俳句の世界では、「霞」は春の季語とされるのに対して、「霧」は秋の季語とされています。 態様の表現の仕方についても、「霞」はたなびくのに対して、「霧」や「靄」は立ちこめる・かかる、日本人特有の繊細な感覚が反映されて使い分けられているようです。 朝一番の「霞」の情景としては、古典の世界では、清少納言の『枕草子』の冒頭、「春はあけぼの」の一節が有名ですね。 「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。」 「春は明け方が良い。朝日が昇るにつれて、だんだんとあたりが白んで、山のすぐ上の辺りの空がほんのりと明るくなって、紫がかっている雲が細くたなびいている様子」、それが趣深くて良いとされており、まさに霞たなびく明け方の風景の中に、春らしさを表す美の姿を見い出しており、作者の繊細な優れた感性が感じ取れます。 一方、夜の「霞」のことは「朧(おぼろ)」と呼びます。春の夜に浮かぶ霞んだ月は「朧月(おぼろづき)」と呼びます。 朧月の夜が「朧月夜」ですが、童謡の『朧月夜』にうたわれた風景は、時を超えて日本の人の心に懐かしさを想い起こさせてくれます。 この歌の1番は、「菜の花畠に 入り日薄れ、見わたす山の端(は) 霞ふかし」から始まるように、先ず、夕日を覆う「霞」の情景を歌っており、2番にて、夕闇に包まれ、夜の「朧」の世界へと時間が流れる中、辺りの風景・風物を5つ挙げた上で、「さながら霞める 朧月夜」で締めくくり、すべてがぼんやりとかすんで見える春の月夜を見事に歌い上げております。 朝の太陽の光に赤く染まった朝焼けには「朝霞」、夕暮れ、夕日に美しく染まった夕焼けには「夕霞」「晩霞」という言い方もあります。 また、春には、霞が幾重にもなって濃淡を織りなしてたなびいている「八重霞」という風景も見られるようです。 「霞」には、実に様々な種類や呼び方がありまして、『万葉集』や『古今和歌集』の時代から、現代に至るまで、数多くの和歌に趣きを変えながら登場します。 古来、「霞の衣」や「霞衣」という表現もあり、霞のかかった景色を薄い衣に見立てて、春の情景を想像力豊かに表した和歌に詠み込まれています。 また、俳句の世界でも、江戸時代を代表する三大俳人、芭蕉・蕪村・一茶はもとより、正岡子規から現代の俳人に至るまで、「霞」を取り扱った句は数多挙げられるようです。 先ずは、芭蕉・蕪村・一茶の各々の「霞」を詠んだ俳句を紹介します。 「春なれや 名もなき山の 薄霞」 松尾芭蕉 「背のひくき 馬に乗る日の 霞かな」 与謝蕪村 「かすむ日や 夕山かげの 飴の笛」 小林一茶 我々にもわかりやすく、情景が浮かんで親しみやすいものを選びましたが、特に芭蕉の句の内容は、今の季節らしい情感を表しています。 「ああ、いよいよ春が来たのかなあ。こんな名もない普通の山々にも、薄っすらと霞がたなびいていることよ」と春の到来を歓迎する気持ちが伝わってきます。 更には、三大俳人が各々訪れた土地の風景の中に「朧」を詠み込んだ俳句も取り上げたいと思います。 「辛崎の 松は花より 朧にて」 松尾芭蕉 「辛崎の おぼろいくつぞ 与謝の海」 与謝蕪村 「すみだ川 くれぬうちより 朧也」 小林一茶 芭蕉が句を詠んだ「辛崎(唐崎)」は琵琶湖のほとり、近江八景の一つに数えられる土地であり、「辛崎の松」は桜の花より朧に霞んで見えると表現しております。 蕪村が訪れた「与謝の海」は有名な天橋立に隣する海のことですが、芭蕉の句を引用する形で、「与謝の海」にも「辛崎の松」と同じ風情がいくつもあると詠んでおります。 一茶の句は江戸で暮らした時分に詠んだものと思われますが、我々現代人としては、瀧廉太郎作曲の歌曲集『四季』の『花』の歌い出し、「春のうららの隅田川」を想い起こし、昔から春の「すみだ川」は、人々にとって季節を象徴する風景だったことに感銘を覚えます。 朝・昼・夕・夜と変幻する春霞の移ろう情景は、春の風物詩、その趣を想い描きながら、春の訪れを穏やかに迎えていきたいものです。 今年は「春一番」も既に吹いて、「三寒四温」という次元を超えて日々の寒暖の差があり、また雨の日も多くなってきました。 世の中の方も、変転が激しく、また、時に視界がぼんやりとして晴れない状況の中においても、環境の変化に向かい合い、しっかりとした軸は保ちながら、肩の力を抜いて、変幻自在に柔軟に対応して、心しなやかに暮らしていきたいと思う次第です。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2024-02-24 08:01
| 雨水(うすい)
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2024年 02月 19日
2月19日は、二十四節気は2番目の節気、『雨水(うすい)』、天から舞い降りる雪が雨へと変わり、氷が水になり、雪解けも始まる頃。 江戸時代に出版された『暦便覧』には、「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」と記されています。 冬の間は凍てついて、眠りについていたような大地に、漸く寒さもゆるんで、しっとりとした春の雨が降り注ぎます。 2月も半ばになると、冬型の気圧配置が緩むことが多くなり、低気圧の影響を受けて雨が降る機会が増えていきます。 実際のところは、北国では積雪が続く時期でもありますが、寒さが峠を越えて、日に日に暖かさを感じる機会が多くなります。 そうした中で、『雨水』は、昔から農耕の準備を始める時期の目安とされてきました。 七十二候では4候、雨水の初候、『土脉潤起(つちのしょう うるおいおこる)』の始期です。 早春の雨で大地が潤って湿り気を含み、まるで脈を打つように土が緩んでくる頃。 『雨水』の七十二候では、節気自体の主題が全体を貫いているようであり、3つの候が連なって、自然界に春らしさが増していく展開を表しております。 雪から雨へと「気象」や「天候」の移り変わりを受けて、大地と大気が共にうるおい、全ての生命を支える植物が萌え始めて、季節の進展を表します。 即ち、春先の恵みの雨を受けて、この初候の4候にて、大地がしっとりと「潤い」を取り戻し、次候の5候では、大気の方も湿り気を帯びて「霞」が登場し、末候の6候では、湿潤を感じ取った「草木」が芽吹き始めて、早春ならではの風景が周囲に広がっていくのを実感するような展開となっています。 「脉」は「脈」の異体字です。日射しを受けてぬかるんだ道などで、土の匂いもほのかに漂ってきそうな情景です。 この時季には、「土匂ふ」「春の土」「土恋し」などの季語が使われ、大地に春の息吹きを感じ、春到来の喜びを表します。 近現代の俳句の世界では、例えば、明治・大正・昭和を生きて活躍した俳人・小説家の高浜虚子には、「春の土」を詠んだ次の句があります。 「鉛筆を 落せば立ちぬ 春の土」 高浜虚子 ふとしたことで鉛筆を手から落としてしまったところ、土にすっと刺さって立ったのを発見して、土に潤いが戻ったことに春が到来したのを実感している情景が伝わってきます。 実は、本元である中国の七十二候・宣明暦では、『雨水』の初侯は、『獺祭魚(だっさいぎょ/たつ うおをまうる)』となっており、春に動物の動きが活発になる情景の一つですが、「獺(かわうそ)」が獲らえた獲物の魚を岸に並べる習性を見て、まるで神様や先祖に対して供物を並べて祀るようであると見立てた内容です。 この獺の祭を「獺祭」と呼び、日本酒の銘柄にもなっておりますが、転じて物事を調べるのに際して多くの参考文献を周囲に並べることも「獺祭」といいます。 正岡子規は自らを「獺祭書屋主人」と称したため、子規の命日である9月19日は「獺祭忌」と呼ばれております。 古典俳諧の世界では、江戸時代の三大俳人のひとり、俳聖と呼ばれた松尾芭蕉には、次の句が残されております。 「獺(かわうそ)の 祭見て来よ 瀬田の奥」 松尾芭蕉 大津の瀬田に行ったら、瀬田川の奥は琵琶湖であり、そこに棲む獺が今頃は獺祭魚という祭をやっているので是非ご覧なさい、という意味であり、ユーモアを交えた言葉を添えて、人を送り出したときに詠んだ句と言われております。 大地がしっとりと潤い始めると、柔らかな日射しにも誘われ、土の下から様々な草花が芽を出し始め、木々の梢も芽吹きます。 地中などで眠っていた動物たちも目覚めて、まさに生命の覚醒の時を迎えて活気づいていきます。 「三寒四温」という言葉も、この時期くらいから、より頻繁に使われるようになりますが、ご存知の通り、寒い日が三日ほど続いた後に、暖かい日が四日ほど続くということで、7日間周期で寒暖が繰り返される現象です。 実は、もともと朝鮮半島や中国北東部のことわざで、シベリア高気圧の影響を受ける冬の気候を表す意味で使われておりました。 日本に伝来して、日本の気候は太平洋高気圧の影響も受けるため、冬には現れにくいことから、日本では春先に用いられ、「三寒四温」を幾度か繰り返しながら、だんだんと暖かくなり、季節は春に向かうというような使われ方が定着しました。 さて、雛人形をいつから飾るかについては、地域によって風習も違いますが、一般的には、『立春』から2月中旬にかけて、できれば日射しがあって穏やかなお日柄の佳き日が良いとされております。そして、『雨水』の始まり、この日に雛人形を飾ると良縁に恵まれるとも言われているようです。 背景は諸説あるようですが、命が芽吹く季節を迎え、生命の源である水の神様にあやかるということがあるようです。 「春一番」は、冬から春への移行期に初めて吹く暖かい南よりの強い風で、『立春』から『春分』までとされていますが、ちょうどこの頃から吹くことが多いようです。 その風圧の凄さは、おだやかな情景とは趣が異なりますが、春に向けての象徴的な風物詩の一つです。 一方、北海道においては、『立春』以降に初めて降る、雪がまじらない雨のことを「雨一番」と呼ぶそうです。 2月下旬に北海道南部から始まり、3月には全道が「雨一番」の季節を迎えるようで、こちらも雨水らしい春の訪れを象徴する表現です。 早春に降り注ぐ雨水の恵みを受けて、時に柔らかな日射しの下で、大地の匂いや息づかいに春の気配を感じられる頃合いとなりました。 私たちも、本格的な春の到来に向けて、暖かい季節の新たな活動にも想いを馳せながら、心と体をしっかりと目覚めさせていきたいものです。 『雨水』の頃から降って、植物の芽吹きを促す役割を果たす雨のことを「木の芽起こしの雨」と呼ぶそうです。 そして、春の雨は、『啓蟄』『春分』と節気が進む中で、草木や花に養分を与えて育成を助けるので、「養花雨(ようかう)」とか「育花雨(いくかう)」と言われるようになります。 また、これからの季節、『啓蟄』の「桃」や『春分』の「桜」をはじめ、様々な花を催すが如く、開花を促すように降る雨は、「催花雨(さいかう)」と呼ばれるに至ります。 自然界に潤いを感じつつ、人としても、肌や体内の潤いに加えて、心の潤いも保ちながら、潤いに満ちた暮らしや生活にしていきましょう。 そして、花と雨との関係性も意識しながら、心身と日々の営みに潤いを保った環境づくりを心がけて、公私の両面において、種蒔き・水撒きを続けて、各人が大切に思っていることを育てて、素敵な花を開かせていきたいと思う次第です。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2024-02-19 08:01
| 雨水(うすい)
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2024年 02月 14日
2月14日は、七十二候では3候、立春の末候、『魚上氷(うお こおりをいずる)』の始期です。 春の兆しに凍っていた湖や川の表面が解け出して、割れた氷の間から、魚が飛び跳ねる頃。 暦のはじめ、『立春』の節気、一年最初の3候において、東からの暖かい風が吹き始める中、春の訪れを最初に知らせてくれる植物や生き物が出揃いました。 初候では『春告草』の「梅」、次候では『春告鳥』の「鶯」、そして、今回の末候では『春告魚(はるつげうお)』の登場です。 七十二候の主題は、魚たちが冬の眠りから目覚め、水の中で活発に動きはじめ、溶けて薄くなった氷の割れ目から跳ね上がる様子も時には見られる頃合いを表しており、日本各地において春を告げる魚、即ち『春告魚』を連想させるテーマです。『春告魚』というのは、実は必ずしも一種類の魚には限りません。 まず、北日本では、3~5月に産卵のために大挙して北海道の西岸に近づくことで有名だった「ニシン(鰊)」が代表的ですが、漁獲量が昔より減ってしまいました。近年は少しずつ回復傾向にありまして、「元祖 春告魚」とも言われる存在感を持っております。 近時は、関東や東海を中心に、やはり産卵のために浅瀬にやって来て春先が旬とされる「メバル(眼張)」が『春告魚』と呼ばれています。 また関西では、瀬戸内海に春になるとやってくる「サワラ(鰆)」が旬であり、漢字からして魚偏に春でもあり、『春告魚』とされています。 瀬戸内海の魚では、他にも兵庫の「イカナゴ(玉筋魚)」も挙げられているように、各地で多様な魚の名前が列挙されています。 渓流釣りが各地で2月から解禁されることもあり、「ヤマメ(山女魚)」や「アマゴ(雨子)」などの渓流魚を指す場合もあります。 地域の人々の生活に応じて、春を代表する固有の魚があるということであり、いろいろな『春告魚』が人々に春の訪れを知らせてくれております。 海の魚に川魚、日本近海及び日本国内には、本当に様々な魚が生息しており、日本人の生活や季節感とも深く結びついていることを改めて感じます。 冬の間、魚たちは氷の下に閉じ込められて、湖・川・池・海などの深場にうずくまって代謝活動を極限まで落としています。 鯉や鮒や泥鰌(どじょう)は、冬眠状態になるとも言われ、ひたすらじっと、微かな春の訪れ、目覚めの時季を待ち続けます。 春先になって薄く張って解け残った氷のことを「薄氷(うすらい)」と呼びます。季語でもあります。 「薄氷」の下、温かくなった水の中で、じっとしていた魚たちが動き出し、ゆらゆらと泳ぐ姿が見え始めます。 俳句の世界からは、今回は「薄氷」と「白魚」の組合せで詠んだ句を、取り上げてみます。 「白魚(しらうお)」は、春の訪れを告げる小魚のことで、近海に棲む魚であり、春先に産卵のために川を上がってきます。 半透明ですが、煮たり蒸したりすると真っ白になるので、白魚というようです。 「しらうをの 雫や春の 薄氷」 松岡青蘿 「うすらひに 紛れて初の 白魚は」 大野林火 松岡青蘿(まつおか せいら)は、江戸時代の俳人であり、大野林火(おおのりんか)は昭和の俳人であり、二人の俳人の暮らした時代は全く異なりますが、このようなコントラストも時には面白いかと思います。 『立春』が過ぎても、時に寒波が到来して大雪が降ったり冷え込みが厳しくなったりと、まだまだ油断はできない季節ですが、『立春』以降、寒が明けてからの寒さは「余寒」「残寒」「春寒」などというようで、寒さの峠を既に越えて、春への期待が膨らんでいきます。 これから春が本格化する中、各地の『春告魚』を運良くいただく機会があれば、旬ならではの味を充分に楽しみましょう。 魚には、今が旬の「サケ(鮭)」「サバ(鯖)」「タラ(鱈)」などに多く含まれる、免疫力を高める良質なたんぱく質をはじめ、ビタミンやDHA・EPAなど、多くの栄養素が含まれています。勿論、免疫力アップには、バランスの良い食事に加えて、運動・睡眠も大切な要素です。 個々人として「健康リテラシー」「ヘルスリテラシー」の向上に取り組み、企業としては「健康経営」「ウェルネス経営」の推進も意識しながら、食事・運動・睡眠の三大テーマが両立した総合的に健康な生活を心掛けて、この機会に「健康寿命」もしっかり延ばしていけるように取り組んでいきたいものです。 立春を迎えまして、「春告草」の梅(初候)、「春告鳥」の鶯(次候)に続いて、「春告魚」(末候)と春を告げる使者が出揃いました。 いよいよ待ちに待った春近し。生活に余裕を持って、周りの小さな変化に気を配りながら、間近に迫ってきている春を五感でしっかりと捉えていきましょう。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
by 72microseasons
| 2024-02-14 08:01
| 立春(りっしゅん)
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2024年 02月 09日
2月9日は、七十二候は2候、立春の次候、『黄鴬睍睆(うぐいす なく)』の始期です。 鴬(うぐいす)が山里で、馴染みのある美しい声で鳴いて、春の訪れを告げる頃。 『立春』の節気は、初候にて「東風」が春の到来を告げて、「梅の花」が咲く頃合いとなり、いよいよこの次候で「鶯」が登場して、最初の「春の音」を聴かせてくれます。 「春の風」を先ず触感・触覚で知って、「梅の花」の美しい姿と香しい匂いを視覚と臭覚で感じて、そして、鶯の第一声を聴覚で受けとめ、未だ寒いながらも春を感じ覚ることが多くなってきます。 そして末候には、「魚」も登場、目や耳に感じる春の鼓動が広がっていきます。 前年の「晩冬」には「雉」や「鶏」が登場して春の予兆を知らせてくれましたが、新しい年、「初春」としては、いわゆる「鳥シリーズ」の最初の鳥として「鶯」の登場であり、これから季節の移ろいの中で他の鳥にバトンを渡すまで、美しい鳴き声を身近に聴かせてくれて、日本のうららかな春を演出してくれるようです。 日本に生息するさえずりが美しい鳥として、鴬・大瑠璃(おおるり)・駒鳥(こまどり)を「日本三鳴鳥」と呼ぶようです。 特に鴬は、「春告鳥(はるつげどり)」をはじめとして多くの別名があり、日本人の季節感と文化に深く浸透している鳥といえます。 鴬は、日本をはじめ、主に東アジアに生息していますが、日本での別名としては、「春鳥(はるどり)」「報春鳥(ほうしゅんどり)」「花見鳥(はなみどり)」 「歌詠鳥(うたよみどり)」「経読鳥(きょうよみどり)」「匂鳥(においどり)」「人来鳥(ひとくどり)」「百千鳥(ももちどり)」など、様々な呼び名があります。 更に大陸からは、コウライウグイスを指した、「黄鳥(コウチョウ)」や「金衣公子(キンイコウシ)」という呼び方も伝来しております。七十二候では「黄鴬」と表現されていますが、実際のところは、コウライウグイスは、鶯とは見た目も鳴き声も異なる別の鳥であり、中国を中心に東アジア・東南アジアに生息する一方、日本には生息していないようです。 毎年、一番初めに聞く鴬の声を「初音(はつね)」といいますが、気象庁は、さえずりを初めて聞いた日を「鴬の初鳴日」と呼んで、生物季節観測の一つとして用いておりました。 生物季節観測には、梅・桜の開花日、楓・銀杏の紅葉した日などの植物季節観測、そして鶯や油蝉の鳴き声を初めて聞いた日、燕や蛍を初めて見た日などの動物季節観測がありました。 日本列島各地で一番多い「初鳴日」は3月であり、実際のところは少し先が鶯の時季ですが、早い所は確かに2月中旬に鳴き始めるのが観測されておりました。 気象庁は、令和2年11月、観測継続の難しさから、生物季節観測の大幅見直し、特に鶯も含めた23種の動物季節観測を全廃するという発表をしましたが、関係者から、学術的にも社会的にも大きな損失ということで、日本生態学会はじめ、動物・植物・鳥・昆虫・魚類など関係27学会の会長連名にて、変更の見直しを求める要望書が提出され、令和3年3月末、気象庁、環境省、国立環境研究所が連携して、生物季節観測の発展的な活用に向けて、試行的な調査を開始する旨、発表されました。 その際、調査枠組として、観測対象外になった種目に関して、①生態環境の変化や気候変動が生態系に与える影響の調査等に有用な基礎資料として、従来の観測データとの継続性を保った調査(調査員調査)、②生物を通じて四季を感じる文化的な価値がある等の観点から、広く一般市民まで参加してもらう調査(市民参加型調査)の2つが設定され、試行調査の結果を踏まえて、気象庁、環境省、国立環境研究所が効果的な調査枠組の検討を進めていく方針にて、取り組んでいくということになっておりました。 現在、国立環境研究所の「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」のサイトには、「市民調査員と連携した生物季節モニタリング」についての解説ページがあり、生物季節(Phenology)に関する情報の蓄積は、IPCC第4次評価報告書にて、気候変動が環境に与える影響を評価する上で非常に有効であると評価されて以降、世界中で注目を集めている分野であるとのことです。 令和3年に開始されて以来、令和4年10月現在、66種目2000件ほどの報告が寄せられており、重要種目として提示した種目は特に観測が充実しており、気象庁の記録に対する偏りもなく、有用なデータが蓄積されつつあるようです。 令和5年5月時点で、46の都道府県から計422名の調査員が参加しており、観測ネットワークの拡充に向けて、引き続き調査員を募集しているとのことです。 サイトには、各種目に関する情報も含めた詳細な「調査マニュアル」が添付されており、活動の紹介動画、支援のための寄付サイトなども掲載されております。 これまで関心を高く持って動向を見守ってきておりますが、まずは新たな生物季節の調査が立ち上がっていることに安堵すると共に、今後の活動の拡大・充実・定着を願う次第です。 古来、日本では「梅に鴬」という表現がよく使われますが、春の到来を伝えて花咲く「梅」と春の訪れを告げる「鴬」は、春を象徴するぴったりの組合せとされ、取り合わせが良い二つのもの、美しく調和するもの、仲の良い間柄のたとえとされています。 しかしながら、実際には、鴬は梅の木にはあまりとまることはないそうで、梅の木にとまるのは主にメジロのようです。 メジロは梅の花の蜜を吸いに訪れますが、鴬は藪や笹の多い林下などを好み、主に虫を食べていて花の蜜や木の実は食べず、また、警戒心が強いので、声が聞こえても姿が見えないことの方が多いのです。英名の「Bush Warber」も、藪でさえずる鳥を意味しています。 「梅に鴬」は、春を表す風流な組合せとして、人々の理想のイメージとして定着して広まったわけでありまして、「松に鶴」「竹に虎」と並んで、松竹梅をベースに慶事・吉兆の象徴として、古くから絵柄などにも良く使われてきました。 今年も、古典俳諧の世界から、江戸時代の三大俳人の鶯を詠んだ俳句を紹介したいと思います。 「鶯の 笠落したる 椿かな」 松尾芭蕉 「鶯の 啼(なく)や小さき 口明けて」 与謝蕪村 「鴬や 花なき家も 捨ずして」 小林一茶 芭蕉の句は、梅を椿に置き換えて、鶯が椿の花の笠を地面に落とした情景を詠んでいるところが印象的です。 蕪村の句は、平易でわかりやすく、鶯が一所懸命に小さな口をあけて啼いている可憐な姿が浮かびます。 一茶の句は、花も咲いていない粗末な家も訪れて啼いている鶯を迎えて、親しみを感じながら、春を楽しんでいるようです。 鴬のさえずりは、「ホーホケキョ」で始まり、「ホーホケキキョ、ケキョケキョケキョ・・・」などと続きますが、鳴くのは鴬の雄であり、主に繁殖時期に聞かれ、他の鳥に対する縄張り宣言の意味があり、雌への求愛や合図の意味があるようです。 実は、「ホー」は息を吸っている音で、「ホケキョ」の方が息を吐いた時のさえずりであると言われています。 繁殖期には、「谷渡り鳴き」と言って、縄張りに天敵が近づいた時、警戒を発するけたたましい鳴き声も聞かれます。 また、一年を通して雄と雌の間で「チャチャチャ」という「地鳴き」と呼ばれる鳴き方も知られております。 「初音」の頃の鳴き声は、実は鶯はまだ本調子には至っておらず、「ぐぜり鳴き」と言われるように鳴き声を整えている頃合いのようです。 まだまだ寒い時季が続きますが、立春になって、春を想起させる動物や植物が少しずつ周りに見られるようになってきました。 古くは、万葉集や古今集にも詠まれている鴬の鳴き声、日本人にとっては早春の象徴です。 江戸時代には、また、良寛和尚が次のような歌を詠んでおります。 「鶯の 声を聞きつる あしたより 春の心に なりにけるかも」 良寛 『新しい年が明けても、私の心は春という気がしていなかったけれど、鶯の声を聞いた朝から、春の心になったのであるよ』 良寛さんらしい、とてもわかりやすい歌で、現代でも直ぐに情景が伝わってきて、私たちの実際の体験にも繋がってきます。 日本列島を「初音前線」が北上してくる中、鶯にまつわる文化にも関心を持って大切にしながら、これからの季節、是非、その鳴き声に静かに耳を傾けて、五感で「春うらら」を感じて、私たちもそろそろ「春の心」を意識した暮らしに切り替えていきましょう。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2024-02-09 08:01
| 立春(りっしゅん)
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