地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。
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2023年 12月 17日
12月17日は、七十二候は63候、大雪の末候、『鱖魚群(さけのうお むらがる)』の始期です。 鮭が群れをなして、産卵のために川を遡り上っていく頃。 『大雪』の節気の趣旨は冬本番、初候では「天空」の気が塞がれて真冬の到来を告げて、次候では「熊」の冬ごもりと続き、「開」から「閉」、「動」から「静」への変転が描かれておりますが、この末候の「鮭」に関しては、子孫を残すために渾身の力を振り絞って川を遡る「躍動感」、次の世代に繋ぐことを目指した最後の「動」、最終局面での「生の輝き」のようなものを感じます。 一つ前の次候『熊蟄穴(くま あなにこもる)』との関係では、今回の主役として登場する鮭は、熊たちが冬ごもりの前に栄養をつける大切な食物の一つでもあります。 北海道のヒグマが、遡上してくる鮭を捕えて口に咥えている姿は、自然界のドキュメンタリーや木彫りの置物などでお馴染みの構図の風景であり、食物連鎖の一場面と言えます。 ストーリ性を感じる展開ではありますが、鮭の遡上は実際には9月から始まって12月頃まで続くという中で、この時季の七十二候に鮭が取り上げられているのには多少事情があります。 それは、中国で作られた七十二候が、日本の気候風土に合うように改定されて「本朝七十二候」となり、明治時代に「略本暦」として改訂される中での経緯にあります。 本来、「鱖魚(ケツギョ)」とは、中国大陸東部に生息する淡水魚で、「桂魚」とも呼ばれる高級魚であり、鮭と同じように群れて泳ぐ魚だそうですが、中国の暦が日本に入ってきた際に、日本には「鱖魚」がいなかったので、代わりに同様に群れて遡上する生態の「鮭(サケ)」を充てたと考えられています。 「鱖」の音読みは「ケイ」「ケツ」であり、「鮭」の音読みも「ケイ」であったという共通点もありますが、「鱖魚」はスズキ目スズキ科に分類され、「鮭」はサケ目サケ科で別の魚です。 経緯は以上ですが、鮭は、実は、鱖魚よりも断然、広範な活動範囲を誇っており、とてもダイナミックな生き様を私たちに示してくれる魚です。 「白鮭(シロサケ)」の稚魚たちは、日本の川の上流で孵化し、生まれ育った川を下って海へ向かいますが、降海後は、数千キロメートルに亘って大海を回遊し、壮大な旅を続けて、3年〜6年くらいかけて充分に成熟した後、秋から冬にかけて母川に回帰、すなわち、故郷の生まれた川へと戻ってきます。 大海で数年暮らす間の回遊ルートに関しては、謎のベールに包まれた部分が少なくありませんでしたが、近年は大分解明されてきているようです。 まず、春から夏に海に降りた鮭は、遊泳能力や餌を捕る能力を養った上で、初夏までに北のオホーツク海へと回遊して過ごした後、晩秋以降に南東の北太平洋西部へと回遊し、最初の冬を過ごします。 翌年の春になりますと、北東に位置するベーリング海へと回遊し、秋まで過ごして成長し、再び秋には南下してアラスカ湾に入って越冬します。 その後、春にはベーリング海、冬にはアラスカ湾と2つの海を行き来して、平均して4歳くらいで成熟、ベーリング海から千島列島沿いに西方の日本列島へと南下し、各々の母川に回帰していきます。 長く遠い旅路を経て、日本に帰還することができる鮭はとても少なく、5%未満とも2%未満とも言われます。 鮭がどのようにして故郷の川に戻って来られるのか、母川回帰の仕組みについては、複数の学説が提唱されていますが、母川特有のにおいを記憶していて臭覚で嗅ぎ分けているとする説、すなわち、「臭覚刷り込み説」が有力視されております。 しかし、遠く離れた外洋から日本列島に至るには、臭覚以外にも複数の方法を賢く使い分けている可能性が高く、体内時計と太陽の位置・高度を基準にしているという「太陽コンパス説」、体内にある磁性体と地球の磁気から方位を感じとる「磁気コンパス説」、外洋の海流を利用して回遊方向を決定する「海流説」などが唱えられております。 アイヌの人は、鮭を「神の魚(カムイチェプ)」と称えて大切にしてきました。鮭の里帰りは、古来から神秘的なものとされてきております。 鮭たちは、産卵場所を求めて大群で川を遡上し、まったく食事もとらず、産卵・受精という大きな役目を終えると、力尽きて死んでいきます。 次の命を繋ぐために一心不乱で遡上してくる鮭で、川が真っ黒になる光景は、とても迫力があり、圧巻であり、人々に大きな感銘を与えてくれます。 鮭の一生は、最初に川を降りた後、何年もの間、大海を回遊して幾つもの海域で暮らし、最後に川を遡上して命を全うするまで、他の多くの動植物と食物連鎖の関係で密接に結びついており、生態系の中で重要な役割を担っているようです。 鮭の遡上は、北海道を中心に北国では冬の風物詩とも言われるほど有名な光景の一つですが、実は本州の割と広い地域において遡上する川が分布しています。 鮭の遡上南限は、太平洋側では利根川など群馬県・埼玉県・茨城県・千葉県に跨り、日本海側では島根県とされており、関東地方でも12月の遡上が見られるようです。 鮭は、熊の冬ごもり準備も含めて、地球のエコシステムにおいて貴重な使命を担っており、我々人間の食材としては、豊富な栄養素を含んでおり、かつ捨てるところのない魚とも言われます。 壮大な生涯や自然界での役割にも想いを致して、身近過ぎて忘れがちですが、我々に与えてくれる恩恵に感謝して、自然環境を守って上手に鮭と共存していくことが大切です。 ここ数年、気候変動問題への意識が一段と高まっており、脱炭素に向けての着実な対策の実践と成果が問われております。 大気汚染や海洋汚染、生態系への影響なども含め、環境問題全般に対する取組みが求められており、生物多様性への危機・脅威に対する認識も益々重要になってきております。 また、令和2年からは、人類全体として自然界との接し方・関わり方を改めて問われる事態にも直面しました。 久栄社としては、決算期の変更を経て、10月から新しい会計年度を迎えております。 引き続き、環境対応印刷のパイオニア企業として、2030年を展望して、新たな潮流にも対応し、気候変動を中心とした環境問題に正面から取り組み、各種の社会問題も含めて、企業体としてSDGsの実践に積極的に尽力し、第二創業的な展開にも繋げていく方針を掲げております。 昨年度は、本社等で使用する電力について、再生エネルギーの導入に踏み切りました。 引き続き、微力ながら、各方面の関係先の皆様とも協力して、サステナブルで且つ安心できる世界を探求していきたいと考えております。 この二年は、地政学問題の影響もさらに深刻な事態となってしまっており、アジアを含めた世界情勢は益々厳しさを増しておりますが、企業としては、経済安全保障にも配意しつつ、軸をぶらさず、中長期を展望して段階的に実践展開を図ることが重要であり、具体的な取組みを進めていきたいと思う次第です。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
by 72microseasons
| 2023-12-17 08:01
| 大雪(たいせつ)
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2023年 12月 12日
12月12日は、七十二候は62候、大雪の次候、『熊蟄穴(くま あなにこもる)』の始期です。 熊が穴にこもって、寒い季節を乗り越えるために、冬ごもりを始める頃。 『大雪』の節気は、本格的な冬の到来を表し、初候は「空」が主題となり、「閉塞」して「成冬」、まさに冬本番を告げております。 この次候は、生き物シリーズとして、「熊」が主題となりますが、『立春』以来、数々の鳥や虫や蛙などの小動物が登場し、先の61候のうち実に19の候が挙げられる一方で、哺乳類や大型動物が取り扱われるのは今回が最初となっており、それも冬ごもりという形で、冬の知らせを象徴する一場面となっていることに少し驚きや戸惑いを覚え、不思議な感じもします。 他方、俳句の世界では「熊」は冬の季語であり、七十二候において、「三冬」の季語である熊が「仲冬」に入って登場することには納得する次第です。 近現代では熊を詠んだ句が多くあり、明治を代表する文学者の一人であり、俳人・歌人である正岡子規の次の句も、その一つです。 「うつむいて 谷みる熊や 雪の岩」 正岡子規 改めて七十二候について、趣きがあり、味わい深いと感じるのは、「熊」たちの一年、春・夏・秋の子育てや活動にも想いを馳せながら、冬ごもりの時季を迎えたことを静かに悟るところにあり、渡り鳥の「燕」や「雁」の遥かな遠き地への旅に想いを致して祈ったり、末候の「鮭」の遡上に際して、数年かけての大海への回遊と川への帰還に心を動かされるのとも通じるところがあります。 熊の冬ごもりは、この時季には食物が不足してしまうことに起因しています。熊は、雑食なので、木の実・果物などの植物や昆虫をいっぱい食べて、その大きな体を維持するエネルギーを得ておりますが、冬になって植物や昆虫が周囲に見あたらなくなってしまうと、絶対的に栄養が不足してしまいます。 冬ごもりの前に、ドングリなどの木の実・山ぶどうなどの果物から動物の肉に至るまで、栄養価の高い食物を大量に摂取し、皮下脂肪をしっかりと蓄えます。 穴の中に入ってからは、何も食べず、ほとんど身動きせずにウトウトしていて、代謝を落して体力を温存し、脈拍や呼吸も減るようです。 熊は、本格的な冬が到来するこの時季の七十二候において、冬ごもりや冬眠をする動物の代表として登場している感がありますが、その生態は、両性類や爬虫類などの変温動物や昆虫などの仮死状態、ヤマネ・リスなどの小動物の低体温・完全休眠状態とは異なることから、熊の場合は、いわゆる冬眠ではなく、冬ごもりという言い方をすることが多いようです。 熊の場合は、実は、脳波は通常の睡眠中とほぼ同じパターンで、数時間おきに起きている時の脳波に戻るようであり、数度下がっていた体温も、数日周期で活動時の常温に一旦戻してまた下げるという循環を繰り返し、わずかな刺激で目を覚ますほど眠りは浅いようです。 冬眠と冬ごもりについては、諸説あるようでして、熊もやはり冬眠していると捉える考え方もあれば、熊の中でも、食性の違いなどの種類に応じて、冬眠する熊と冬ごもりをする熊があるという考え方など、様々です。 熊の系統は、約2000万年前、大型のネコ科動物を含む食肉類から分化したと推定されており、イヌ亜目の中に位置し、イヌ科と類縁関係が近く、発達した犬歯と鋭いかぎ爪で獲物を捕まえます。 熊の祖先は、分化した後、植物を含めたさまざまな食物を食べるようになり、雑食化した動物であることが特徴です。 そうして、熊たちは世界の様々な環境に適応して、種類を増やしながら生息域を広げていきました。 熊は、生物分類学的には、クマ亜科・メガネグマ亜科・ジャイアントパンダ亜科に3分類され、最も種類が多いクマ亜科は3属6種類に分かれることから、世界には8種類の熊がいると言われます。 具体的には、最も体が大きく北極中心に生息するホッキョクグマ、それに次ぐ大きさで欧州・アジア・北米と幅広く分布するヒグマ、それより少し小柄で北米・中米に生息するアメリカグマ、アジア地方に生息する胸の「月の輪」に特徴があるツキノワグマ、熊の仲間では最小で東南アジアに生息するマレーグマ、南アジア等に生息するちょっとナマケモノに似ているナマケグマ、そして、南米の標高の高い熱帯ジャングルに生息するメガネグマ、中国の山奥の竹林に棲むジャイアントパンダと、多様です。 日本には、北海道に生息する日本最大の哺乳類であるエゾヒグマ、本州以南に生息するニホンツキノワグマの2種類がいます。 冬ごもりの穴としては、ヒグマは、狭い洞窟などを利用するほか、自分で斜面の土を掘って穴を作ります。ツキノワグマの方は、自然に出来た樹洞や樹木の根元の穴、岩の隙間などを利用します。 熊は、冬ごもりの間、絶食状態の中で出産をして、その後数ヶ月間も飲まず食わずのまま、授乳をして子どもを育てます。出産は冬ごもりの目的の一つでもあります。 我々には驚異的な行動ですが、穴の外に出られるようになるまで厳しい寒さから子どもを守りながらの子育てであり、理にかなってもいます。 人間は、熊のように冬ごもりはしませんが、戸外で木枯らしが吹きすさぶ中、段々と家の中で暮らす時間が増えてくる時季です。 時々、しっかりと体を動かして柔軟性や筋力も維持することを心掛けながら、本格的な冬の暮らしに向けて慣らしていき、家での生活を前向きに楽しんでいきたいものです。 先ほども俳句を紹介した正岡子規には、病を患っていたこともあり、人の暮らしながら、「冬籠り」を詠んだ俳句が数多く残されております。 その中から、目の前に情景が浮かび、明るさと暖かさを感じられる句を一つ、ご紹介したいと思います。 「日あたりの よき部屋一つ 冬籠」 正岡子規 「冬籠り」については、古典俳諧の世界でも、江戸時代の三大俳人の俳句が見つかりましたので、幾つか紹介したいと思います。 「冬籠り また寄りそはん この柱」 松尾芭蕉 「まづ祝へ 梅を心の 冬籠り」 松尾芭蕉 「冬籠 心の奥の よしの山」 与謝蕪村 「冬ごもり 燈下に書すと 書かれたり」 与謝蕪村 「御迎ひの 鐘の鳴也 冬籠」 小林一茶 「猪熊と 隣づからや 冬籠」 小林一茶 今年は、熊の主食であるブナの実やドングリが不作なようで、秋から冬籠り前の熊が人里から市街地・人家に至るまで頻繁に現れており、熊の被害にあった人は、統計を取り始めて以降で初めて200人を超えて過去最悪となっており、環境省は引き続き注意を呼びかけております。 専門家によると、熊は人を襲おうと思って襲っているわけではなく、人と会ってパニックになってしまい、結果として襲っているということのようです。 山や森にいた熊が人の集落に現れるようになった背景には、高齢化などで人が山から撤退して耕作放棄地が増えるなど、集落と山の森林との境界線が曖昧になっていることも大きいようです。 本来の熊の棲みかである森林と市街地の間に緩衝地帯を設けつつ、熊が市街地に入りやすい要素をなくすなど、棲み分けできる環境を取り戻し、人への被害を減少させるための対策を地道に進めることが大切であり、今後、良い形で共存できる状況へと改善していくことを期待したいと思います。 今年も12月13日は「正月事始め」にあたり、お正月に歳神様を迎え入れるために「煤払い」をする日とされてきました。 早めに余裕を持って大掃除の段取りをして、熊と違って豊富な食物に恵まれていることに感謝しつつ、師走の寒さに負けずに心身を意識的に働かせていきましょう。 この時期、寒い中ではありますが、時々の換気や風通しも、健康を維持する上で大切な習慣の一つかと存じます。 お部屋も、人の心も、メリハリをつけて、外に開いて新しい風を取り入れつつ、内には暖かさや確たる信念や想いを保って、充実した師走の日々を送っていきたいものです。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2023-12-12 08:01
| 大雪(たいせつ)
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2023年 12月 07日
12月7日は、二十四節気では、雪がさほど多くなかった『小雪』の候から、『大雪』の候へと、節気が移ります。 全国的に冬一色となり、本格的に雪が降り始める頃。 冬型の気圧配置が強まっていく中、次第に雪が激しく降るようになり、山々は大いに雪に覆われて、平地にも降雪があります。 本格的な冬の到来を迎え、金沢の兼六園など、降雪地域の庭園では、雪の重みで庭木の枝が折れないように、順次、雪吊りが施されています。 七十二候は61候、大雪の初候、『閉塞成冬(そらさむく ふゆとなる)』の始期です。 空は厚く重く垂れこめる雲に覆われ、天地の気が塞がれて、いよいよ真冬が訪れる頃。 七十二候においては、春夏秋冬の移り変わりの中で、天空や大地の変化、天候、季節の風、変化する水の姿、虹や雷など、様々な自然現象や気象がテーマとして登場します。 この『大雪』の初候では、「空」が主題となっており、「初秋」にあたる8月下旬、『処暑』の次候、41候の『天地始粛(てんちはじめてさむし)』以来の天空の変化が表されており、「さむし」「さむく」という和の音こそ一緒ですが、天地が鎮まり収まっていく転機から3ヵ月余の時が過ぎて、冬本番の時季を迎え、天地の気の閉塞を身近に感じるに至ります。 『大雪』の節気では、続く次候・末候は、言わば動物シリーズで、次候は「熊」、末候は「鮭」が取り上げられ、自然界における冬支度や繁殖活動の情景が描かれていきます。 「閉塞(へいそく)」とは、閉じて塞ぐことですが、空は重苦しく閉ざされ、灰色の冬の雲で塞がれます。 「雪曇り」とは、真冬の時季、今にも雪が降り出しそうな重たい雲に覆われた空模様を言います。 12月上旬は、日暮れの最も早い時季でもあります。一年で最も早く夜が訪れるのは、冬至の手前、今時分です。 冬は「初冬」「仲冬」「晩冬」と「三冬」で呼ばれますが、これからは「初冬」から「仲冬」に移り変わっていきます。 凍てつくような寒さの中、生き物も活動を控え、じっと息を潜めており、辺りは深閑(しんかん)とします。 雪化粧をした山々の静謐な情景、枯木となった街路樹に寒風が吹きつける風景など、冬景色が全国に広がっていく時季です。 今回も、古典俳諧の世界から、冬の「枯野」を詠んだ俳句として、病床にて作句し芭蕉の生前最後の句となった有名な句をはじめ、江戸時代の三大俳人の句を選んでみました。 「旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る」 松尾芭蕉 「蕭条として 石に日の入る 枯野かな」 与謝蕪村 「遠方や 枯野の小家の 灯の見ゆる」 小林一茶 雪に関しては、その状態から、淡雪や細雪、ぼたん雪やべた雪など、日常でも様々な表現や呼び方が使われますが、降雪と積雪ではまた異なる言葉があり、降雪では、乾雪(かわきゆき)として灰雪・粉雪・玉雪・綿雪の4つ、潤雪(ぬれゆき)として綿雪・濡雪・水雪の3つを挙げる分類もあるようです。 雪も昔から様々な和歌に詠まれてきましたが、百人一首にも収録された、三十六歌仙の一人、坂上是則の歌が有名です。 『古今和歌集』に採録された歌です。 「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」 坂上是則 奈良県吉野郡周辺の「吉野の里」は、春は桜の名所で有名であり、秋は紅葉の名所ですが、冬は雪の名所でもありました。 和歌の意味としては、「静かに夜が明ける頃、まるで有明の月が照らしていると思えるほどに、吉野の里に白い雪が降り積もっている」、とても清々しい空気の中、雪でぼんやりと明るい、冬の夜明けの美しい情景が、1100年の時を超えて眼前によみがえるようです。 これから次第に寒くなり、木枯らしも益々強まり、いよいよ冬本番を迎えます。 雪にはならないとしても、この時季に降ってくる冷たい雨は「氷雨(ひさめ)」と呼ばれ、体温を奪います。 年末に向けて、日本列島は山間部を中心に舞い降りてくる雪に次第に包まれていきます。 また、冬将軍とも呼ばれるシベリア寒気団が到来すると、日本海側を中心に大雪がもたらされることになります。 今の3ヵ月予想では、平年並みの気温や降水・降雪を中心にしつつ、気温は平年より高い方の確率が高く、降水量は地域によって平年より多かったり少なかったりで、降雪量は平年より少ない方の確率が高い予想となっており、また、月に応じて地域ごとに傾向が示されております。 備えあれば患いなし。 突然に大雪が降ってきても対応できるように、冬の初めにあたって、衣類や備品などを確認しておきたいものです。 朝晩の冷え込み具合にも気を配りながら、体調を整えて、この時期、日が暮れるまでの大切な時間を有意義に活用しながら、年内の予定などを早めに洗い出して、段取りをしっかりとして充実した師走の日々を送っていきましょう。 今年は、過去3年の状況から脱して、従来のように日々の活動や移動が自由にできるようになり、久しぶりに思い出に残るような印象的なイベントや集まりも多かったのではないかと存じます。 残り一ヶ月、年頭の抱負やこれまでの経緯や進捗を振り返りながら、各人なりに良い一年へと仕上げをして、来年に繋がるように、前向きに取り組んでいきたいものです。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
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| 2023-12-07 08:01
| 大雪(たいせつ)
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2023年 12月 02日
12月2日は、七十二候は60候、小雪の末候、『橘始黄(たちばな はじめてきばむ)』の始期です。 橘の実が緑から黄色へと色づいて熟し始める頃。 『小雪』の節気は、初候においては、冬の寒さが厳しくなっていく中、空気が乾燥し、「虹」がフェイドアウトしていく様子が取り上げられる一方、次候の主題は木枯らし、「朔風」という表現にて、冬に吹く冷たい北風が主役となり、強い風で木の葉が払われる冬景色が表現されています。 改めて、初候と次候で、静と動、衰退する事象と本流・主流となる事象のコントラストが効いているのを感じますが、この末候は、冬ながら生命力を感じさせる色鮮やかな「橘」が登場します。 七十二候で主題となる植物の実としては、6月中旬の『芒種』の末候、27候で黄色く色づいた「梅」とこの「橘」の2つだけであり、趣は異なりますが、いずれも日本人の生活や文化に根ざした存在感を発揮しています。 橘(たちばな)は、古くから日本の暖地に自生している唯一の日本固有の柑橘類であり、ヤマトタチバナ、ニホンタチバナなどの別名でも呼ばれます。 橘自体の果実は、現代のみかんよりも小ぶりで黄金に輝き、表皮はとても滑らかで香りも良いですが、酸味が強くて苦味もあるので生食には向きません。 一方、橘という言葉は、日本固有の種だけではなく、外来の食用に向いている種も含めて、柑橘類の総称としても使われております。 『古事記』『日本書記』では、垂仁天皇が田道間守(たじまもり)を常世の国に遣わして、「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」「非時香木実(時じくの香の木の実)」と呼ばれる不老不死の霊薬を持ち帰らせたとの話があります。 残念ながら、垂仁天皇は既に崩御されており、田道間守も嘆き悲しんで殉死してしまいますが、『古事記』の本文では、「非時香菓」を「是今橘也(これ今の橘なり)」という一節があります。 橘は、そうしたことから、不老長寿の象徴、永遠の繁栄をもたらすものとして珍重され、「常世物(とこよもの)」という古名や「常世草(とこよぐさ)」という異名で呼ばれるようになります。 また、一説には「田道間守花(たじまはな)」から転じて人々に「たちばな」と呼ばれるようになったといわれております。 西暦の3世紀に書かれた中国の『魏志倭人伝』の中には、倭人や倭の国々に係る記述の後、倭国大乱と女王卑弥呼に係る記述の前に、倭の風俗などを紹介する中で植物の種類に関する記述があり、日本に橘が自生していることが記されております。橘は、人の歴史のかなり早い時期から登場しており、古くから歌にも多く詠まれて親しまれてきました。 『万葉集』には、聖武天皇の詠まれた次の歌が有名です。 橘は常緑樹なので、葉は冬でも青々としていて枯れることのないことから、永遠の繁栄の象徴とされてきたことがわかります。 「橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝(え)に霜降れど いや常葉(とこは)の樹」 聖武天皇 花は白く可憐で、初夏に爽やかな良い香りを放ちながら咲き、「花橘(はなたちばな)」として、古くから数多の歌人に愛されております。 『古今和歌集』には、詠み人知らずで、次のように詠われ、橘の香りは、昔の恋人への懐旧の心情と結びつけられています。 「五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする」 詠み人知らず 平安の世には、平安京内裏にある紫宸殿には、「左近の桜」「右近の橘」と言われるように、桜と並んで、長寿瑞祥の象徴として正面の階段から見て右(向かっては左)に橘の樹が植えられました。 私たち日本人にとって身近なのは、お雛様の雛飾りです。みかんに見えるのが橘です。「右近の橘」、是非、確認して、左右を正しく飾りたいものです。 今でも、京都御所を訪れますと、紫宸殿前の広い敷地の中に、「左近の桜」とともに「右近の橘」を見ることができます。 京都御所は、平成28年より、いつでも予約申込なしで見学が出来るようになって7年余り、令和に改元された4年前には、連日、多くの観光客が内外から訪れていました。 3年前は、一時、参観を休止しましたが、夏には、令和元年10月の即位礼正殿の儀で用いられた「高御座」等の一般参観も期間限定で実現しました。 その後は、一昨年以来、通年公開を継続、誰でも無料で参観できます。今年も11月には秋の特別公開「京都御所 宮廷文化の紹介」が催され、多くの拝観者で賑わったようです。 敷地内には池を中心とした回遊式庭園である御池庭、庭石や灯籠を配した御内庭など、木々や花々などを愛でながら季節の移り変わりを楽しめる庭園も備わっております。 また、4年前、平成31年3月に現在の上皇陛下のご即位三十周年を記念して、また、令和元年11月には今上天皇陛下のご即位をお祝いして 京都御所茶会が催されており、国賓来訪の折には接遇も行われるなど、皇室文化を紹介する場として重要な役割を果たしているようです。 古典俳諧の世界では、江戸時代の三大俳人の一人、俳聖と呼ばれた芭蕉には、次の俳句があります。 「橘や いつの野中の 郭公(ほととぎす)」 松尾芭蕉 平安時代以降、和歌ではホトトギスに「郭公」の字が当てられてきており、芭蕉の時代の句でも「郭公」は「ほととぎす」と読み、ホトトギスを意味しています。 現代においては、動物学的には、カッコウ(郭公)とホトトギス(時鳥)は、異なる科目に属する別の鳥ではあります。 元禄三年に上方にて詠まれた句のようで、「橘の花の匂いにホトトギスの鳴声が聞こえる、いつのどこかはわからないが、このような懐かしい情景に野の中で出遭ったように思える」という感じでしょうか。 この芭蕉の句は、先に挙げた『古今和歌集』の詠み人しらずの和歌を下地として、橘が昔の記憶を想い起こさせることを取り扱い、作句の動機としているようです。 さて、日本古来の代表的な「姓(せい)」として「四姓」という表現があり、具体的には「源平藤橘(げんぺいとうきつ)」と言われます。 これは、平安時代以降に権勢を誇った氏族、すなわち、源氏・平氏・藤原氏・橘氏を総称したものです。 天皇家から臣籍降下した者に与えられた姓の主流として、天皇の子や孫に与えられることが多く、姓の中で最も格が高いものとされました。 奈良時代、元明天皇が県犬養三千代に「橘宿禰(たちばなのすくね)」の姓を賜ったことに始まり、その子・葛城王が橘諸兄へ改名した後、諸兄の子孫は橘氏を称しました。 諸兄は初め「橘宿禰」の姓を受け、その後「橘朝臣(たちばなのあそん)」の姓を賜与され、権勢を誇り、平安時代に入ると、橘氏の多くは「橘朝臣」を称し、公卿職を務めたようです。 橘の花と葉は家紋にも多く取り入れられており、江戸時代には90家余りの旗本が用いていたようで、十大家紋の一つとして挙げられますが、1937年に制定された文化勲章も橘をデザインしており、昭和天皇のご意向で意匠が橘花とされたと言われており、その悠久性や永遠性が文化の永久性に通じるとされております。 時代は令和も5年目となり、天皇家にもゆかりのある日本の橘の歴史と文化に理解を深めつつ、一年を通して艶やかな緑の葉を茂らせ、生命力に輝く黄金の実をつける、日本固有の橘の木を大切にしていきたいものです。 そして、身近にはみかんの季節を迎えて、暖かい部屋で、鮮やかな色合いと味覚を楽しみながら滋養をいただいて、本格的な冬の到来に備えていきましょう。 みかんには、免疫を高めて抵抗力をつける働きのある栄養素、ビタミンCが豊富に含まれており、風邪などの病気予防の効果も大いに期待できます。 β‐クリプトキサンチンなど他の栄養素も含めて、抗酸化作用、動脈硬化予防、美肌効果などもあるようで、今年もやはり、冬の体の免疫力向上と健康維持に欠かせない恵みの実かと思います。 今年もいよいよ、残り一ヶ月をきりました。次は『大雪』を迎え、日もさらに短くなり、本格的に寒い時季を迎えます。 先ずは冬の前半戦ともいうべき時季を、しっかりと乗り切っていきたいと思う次第です。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
by 72microseasons
| 2023-12-02 08:01
| 小雪(しょうせつ)
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2023年 11月 27日
11月27日は、七十二候は59候、小雪の次候、『朔風払葉(きたかぜ このはをはらう)』の始期です。 冷たい北風が吹いてきて、木々の葉を払い落し、また払い散らす頃。 『小雪』の節気では、初候は『自然現象シリーズ』として「虹」が取り上げられ、本格的な冬の季節に「虹」が姿を消し、陽から陰へと転じていくことを表します。 末候は『植物シリーズ』として「橘(たちばな)」の実が登場し、古来から神話や伝承と結びついて不老長寿の象徴ともなった日本固有の柑橘類が、冬の風景に彩りを添えています。 今回の次候は、風がテーマとなっており、冬を象徴する「朔風」、即ち、北風や木枯らしが強く吹いて、木の葉が払われる様が表現され、小雪の時季の主題を為しているように感じます。 七十二候には、春夏秋冬で4つの季節を表す風が登場しますが、特に春と秋は、『立春』と『立秋』の冒頭、暦の上で季節が変わることを告げており、夏と冬は南風と北風で対の関係で呼応しています。 『春夏秋冬の風シリーズ』は、即ち、春は2月上旬、『立春』の初候、1項の「東風(はるかぜ)」、夏は7月上旬、『小暑』の初候、31候の「温風(あつかぜ)」、秋は8月上旬、『立秋』の初候、37候の「涼風(すずかぜ)」と続いており、そして、冬は11月下旬、この『小雪』の次候、59候の「朔風(きたかぜ)」で完結するわけです。 「朔(さく)」は、「朔日(さくじつ)」と言われるように、陰暦では月の第一日を指しますが、十二支の最初の子(ね)は北を指していることから、方角としては北を指す漢字となりまして、「朔風(さくふう)」とは北の方から吹く風、即ち北風のことになります。 「晩秋」から「初冬」、さらに「仲冬」にかけては、木枯らしの季節であり、木々の葉を吹き枯らす風が太平洋側地域を中心に吹き抜けますが、冷たい北風は、木々の葉を枯らしながら地面に落として、たくさんの落ち葉を辺り一面に散らかしていきます。 散った落ち葉は地面いっぱいに拡がって、緑に囲まれていた公園や街路樹の並ぶ道路には、木の葉の絨毯が出来上がります。 木枯らしは、更に落ち葉でできた絨毯を地上に舞わせるように吹き払って、その模様を刻々と変えていきます。 日本では、各種のモミジも含めて庭園などに美しく植えられたカエデ、街路樹の代表格のイチョウ、サクラ、ケヤキなど、周囲には数多くの落葉樹が見られ、森林としては、ブナ、ナラの樹林など多種多様な広葉樹に加えて、カラマツなどの針葉樹も含めて、実に色も形も千差万別の落葉樹が各地に分布しています。 日本の伝統色では、黄や赤に紅葉していた木の葉は、地面に落ちて枯れ葉となっても「朽葉色(くちばいろ)」という風雅な呼び名で表現されます。 秋の落ち葉の色を表す王朝風の優雅な伝統色名であり、黄染に浅い紅花染を施したような少し赤みがかった褐色が基本ですが、「黄朽葉」「赤朽葉」「青朽葉」の三系統を中心に、昔の日本人は「朽葉四十八色」といわれるほど微妙な色の違いを見分けていたようです。 ここで、日本の伝統文化の中で、落ち葉に表象される美しさに関連して、茶聖とも言われた、千利休の逸話を紹介いたします。 岡倉天心が見事な英語で綴った「茶の本」、原題は“THE BOOK OF TEA”の“THE TEA-ROOM”の一節からの引用になりますが、お話の導入の部分では、“There is a story of Rikiu, which well illustrates the ideas of cleanliness entertained by the tea-masters.”と始まります。 ある日のこと、利休は、次男の小庵が庭の路地を掃いて水を撒いて掃除している様子をじっと見ておりました。 小庵が庭掃除を終えた時ですが、利休は「それでは、まだ充分綺麗になっていない」と言い放って、小庵にやり直しを命じました。 小庵は庭掃除で疲労困憊の時間を過ごした後、「父上、もう何もすべきことはございません、踏み石は三度も洗いましたし、灯篭や木々にも充分に水を注ぎました。苔類も新緑に輝いて、小枝一つ木の葉一つ地面には落ちてはおりません」と利休に伝えました。 利休は小庵に向かって、「愚か者、それでは庭の路地の掃除方法になっていないではないか」と叱った上で、自ら庭に足を踏み入れて、その手で木を揺らして、黄金と深紅の葉を庭に数枚撒き散らしました。まさに秋の錦繍の切れ端です。 岡倉天心が“What Rikiu demanded was not cleanliness alone, but the beautiful and natural also.”と解説してまとめているように、利休が求めたのは、決して自然そのままではないが、単に全てを片づけるということでもなく、落ち葉という自然を適度に取り入れて生かした秋の風景です。 そこに茶の湯の理想ともいうべき美意識を表した逸話として、「一輪の朝顔」の話と併せて、400年の時を越えて大切に語り継がれてきております。 今回も、古典俳諧の世界から、江戸時代の三大俳人の「木枯し」「凩(こがらし)」や「木の葉」「落葉」を詠んだ俳句を幾つか紹介します。 三者三様ながら、目には見えない木枯しを眼前の風景に詠み込む感性のきらめきに超一流のものを感じます。 落葉の情景も趣きがあり、それぞれの様子を想像して楽しめるかと思います。 「木枯に 岩吹きとがる 杉間かな」 松尾芭蕉 「木枯しや 竹に隠れて しづまりぬ」 松尾芭蕉 「三尺の 山も嵐の 木の葉哉」 松尾芭蕉 「凩や 広野にどうと 吹起る」 与謝蕪村 「こがらしや 岩に裂け行く 水の声」 与謝蕪村 「待(ち)人の 足音遠き 落葉かな」 与謝蕪村 「こがらしや しのぎをけずる 夜の声」 小林一茶 「木がらしや こんにゃく桶の 星月夜」 小林一茶 「猫の子が ちよいと押さへる 落葉かな」 小林一茶 地面に落ちた葉は、微生物たちの働きによって肥料となって土を豊かにし、地上の木々はその栄養を吸い上げて春には新芽を出すという、大きな生命の循環があります。 落ち葉には、春の再生を用意して新しい春の息吹に繋がる望みの葉であるという意味で、「望み葉」という新たな希望へと繋がる素敵な表現もあります。 木枯らしのこの季節、落ち葉が散った木々では細かい枝が露わとなり、地表でカソコソと音を立てる枯れ葉と相まって、寂寥感を感じがちですが、改めて日本の伝統的な美意識や豊かな感性を大切にして、遠い春への循環の流れにも想いを致して、是非、前向きに初冬の寒さに立ち向かっていきたいものです。 そして、季節の風が変化していくように、世の中の風向きというものも、必ずどこかで変わっていくものです。 国際情勢も国内政治も、グローバル経済も日本経済も、市場やマーケットも、社会の流行やトレンドも、いずれも風向きを読むことが大切になります。 今現在に吹いている風を知って、逆らわずに対応していくことも重要ですが、どんな風でもやがては収まって、新しい風へと移り変わっていきます。 心を研ぎ澄ませて、時代の風向き、世の趨勢や成り行きを冷静に捉えて、未来に向けて、しっかりと布石を打って、プロアクティブに力強く前に進んでいきましょう。 そろそろ2024年、令和6年に吹くかもしれない風に想いを馳せて、シナリオ・プランニングの手法を用いて、将来に向けた備えを考えて実行していくことにもチャレンジしたいものです。 不確実な時代に生きる上で必要なのは、悲観的でも楽観的でもなく、客観的に考えることであり、起こりうる可能性を客観的に想定し、その想定を踏まえて今からできる備えを検討することです。 将来における不確実な可能性を考えて終わるのではなく、それらの可能性をインプットとして、様々なことを考えていくプロセスが重要です。 シナリオ・プランニングの実践で、環境変化を考える枠組みや自らの認識も見直しつつ、将来に向けた備えを考え、実行し、その取組みを繰り返すという一連の流れを習慣づけていきたいものです。 地球に優しい環境対応印刷を推進する久栄社では、環境問題に取り組む必要性や、自然の尊さをお伝えしたいと考えております。このブログでは、四季折々の風情ある写真にのせて、古代中国で考案された季節の区分である七十二候をお届けする「七十二候だより」を連載しております。お忙しい日々の気分転換に、気象の動きや動植物の変化など、季節の移ろいを身近に感じていただけましたら幸いです。 \\\ ぜひこちらも合わせてご覧ください /// ▼運営会社久栄社のサイトはこちら ▼久栄社のFacebookはこちら ▼お問い合わせフォームはこちら #
by 72microseasons
| 2023-11-27 08:01
| 小雪(しょうせつ)
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